地産地消と地酒


念仏のように地産地消をうったえ、地産地消こそが美味しさと健康の源泉であるかのようにおっしゃる方々がいます。


信じる者は救われる・・・のであれば、信奉する方々はそれこそを信じてくださればいいわけです。


同じように、地方に行ったら地元のお酒こそを飲むべきであるという方々もいます。地産地消の食材に地酒があわないわけがない。


確かに美しい言説です。


しかしながらムードに酔いしれたその主張が本当に正しいのでしょうか。


多くの酒蔵が地元の食材にあわせようと酒質を工夫したわけではありません。たまたま同じ水を使うことはあるけれども、同じ水だから相性が良いと言うほど単純に味わいは区別できるわけではありません。


美味しくないお酒しか見当たらない土地もあります。美味しいお酒でも料理といっしょにひとつのお酒だけを飲み続けると飲み飽きしてしまう酒質の土地柄だってあります。農家さんの意識がそれほど高くなく、農協主導の野菜がはばを効かせている場所もあります。山の中で養殖の魚しかとれない場所もあります。山の中だからといって山菜や茸が少ない場所、それらを採る人々があまりいない場所もあります。日本中の漁師さんが全員同じようにレベルが高いわけではありません。日本中の農家さんが無農薬で旨みのある野菜を作っているわけでもありません。日本中の畜産業者が飼料を厳選し、手間暇を惜しまずに正しく育成した牛豚鶏を生育させているわけではありません。


それでもやっぱり地元の中で最良を選ぶことが正しいのか、その選択を全国に求めることは邪道なのか、同じ酵母同じ水系のお酒だけを飲むことをお奨めしなくてはならないのか、全国にそれを求めることは地方では正しい道ではないのか。東京では地産地消を言わず、築地には世界の最上が集まるという方々が、地方ではその土地の食材と土地のお酒を求める・・・・食材の流通ルートはすでに築地だろうが地方都市であろうが、まじめに良い食材を求めようとする職人のところに集まる時代になりつつあります。


料理店には料理人個々の主張があって、自らが美味しいとおもう食材と調理方法、お酒との組み合わせを考えてもいいではないですか。地方だから地産地消と地酒を通り一遍に求めるだけの時代をそろそろ終わりにしませんか。