ご相伴ワイン


30年近くワインに関わってきて一番思うのは、世の中には未だ見知らぬ凄い世界がいくらでも存在するってこと。いつまでも謙虚で「あたしぁ何にも知りません。まだまだヒヨッコです」くらいがちょうどいいのです。


関わってきたといっても、日本酒もワインもあくまで板前の視点であることも忘れてはいけません。ソムリエさんの専門知識もなければ、きき酒師の資格も持っていません。特にワインなんて、ブルゴーニュの一部とボルドーのごくごく一部、シャンパーニュの限定されたものの経験があるだけなのですから、「私 ワイン通」などとは口が裂けても言えません。


んで
やっぱり「私の世界なんて狭い狭い」と改めて思い知らされた極上の一本をご相伴させていただきました。



クリュッグ クロ・ダンボネ1996


シャンパーニュ好きにはお馴染みのクリュッグ。店にもふつーーのクリュッグはもちろん、1985と1989のヴィンテージをリストに載せていますが、こんなのが出たんですね。有名なクロ・デュ・メニルがシャルドネだけで造られたブラン・ド・ブランなのに対して、クロ・ダンボネはピノ・ノワールだけで造られたブラン・ド・ノワール。クロというくらいですから石垣に囲まれた小さな小さな畑なのだそうです。しかも、このシャンパンのためにピノの植えるところから始まっておよそ30-35年を経てやっとファースト・ヴィンテージである1996年が誕生したのです。世界各国に3000本のみ、日本に入ってきたのは極々少量です。値段は・・・恐くて書けません。


クリュッグらしいオレンジにも似た熟成感 深い深い味わいととてつもなく長い余韻。シャンパンの香りが部屋に充満するという感覚がわかっていただけるかどうか。。。。一度ご相伴して、調理場に戻り、再びお部屋に入ると、香っているんですねぇ。その香りにさえ酔ってしまいます。



もう一本のご相伴はシャトー コス・デストゥルネル1961



クロ・ダンボネ1996の後に続くとなればこのクラスか! 20世紀最高のヴィンテージのひとつである1961年です。しかもメーラ・ベッスによってリコルクされた逸品です。「リコルク」は一般的にはネガティブな印象がつきまといますが、メーラ−・ベッスのリコルクとなれば品質を保証されたというお墨付きです。


お味は。。。。ああ・・・・としか言えません。このワインの100年後もみてみたい。


ワインも日本酒も机上の勉強では何も得られません。つまり飲んだ経験値の積み重ねだけでしか語れないのですね。という意味では、本当に恵まれた幸せな板前であります。


しかし、何度も言うようですが、世の中にはまだ見知らぬすっごいモンがそこここにあるのです。という実感。