昨今の結納事情


結納を取り交わすご両家とか、仲人のいる結納・結婚式という形は絶滅危惧種に近いほどめずらしくなっています。


結納がなくなった今、ご両家の顔合わせが結納式の代わりで、ややもするとこの席がご両家の初対面だったりもするようです。


当然のように私世代のご両親は、顔合わせの席でどっちが上座??・・・と戸惑うことしきりで、私に「どちらに座ったらいいもんでしょう・・・」とご質問があることはごく当たり前です。



昔をたどってみれば、結納の席ではご両家には別々に仲人がいて、お嫁さんとなるお宅に新郎側の仲人とご両親が結納品をもって午前中のうちにうかがいます。結婚は家と家との結びつきでしたから、新郎本人は結納式の場にはいかないことも普通であったのです。


結納式は新郎側をお迎えするわけですから新郎側が上座、その中でも両仲人が一番上の席、続いてご両親、新婦になる女性などは下座に控えているべき存在でありました。


無事「幾久しく」と結納が取り交わされた後、新郎側をもてなす意味でお料理が振舞われるわけですが、私が若い頃には料理屋で結納・・・などというと、ちょっと引け目を感じるもので、本来ならご自宅でもてなし、料理屋が出張や仕出しでお料理を用意するのが当たり前でした。料理屋に行かなければもてなしができないなんて・・・というわけです。ご大家になれば、お宅におもてなしのためのお膳 塗り物一式 器などはすべて蔵に用意されていて(娘の結婚のための大切なお道具でもあります)出張や仕出しにもそのお道具を使ったものです。


今だったら、「そんな堅苦しい家とはお付き合いできない」とばかりにマイナス要素になってしまいそうな段取りの数々ですが、略式が略式をよんで、両親が料理店で顔を合わせて乾杯でお仕舞い・・・というのもの昔を知る人間には物足りなく感じます。


とはいっても、冠婚葬祭のあらゆることはすさまじいほど流行に左右されてきたことを知ったのは齋藤美奈子さんの「冠婚葬祭のひみつ」を読んでから。私がゴタクを並べたことも一昔前の流行の一つであったのかもしれません。


もう二十年もすると、両親が顔を合わせるのは結婚披露パーティーが始めてってことになるのかも。