開高健


BS「週刊ブックレビュー」は開高健さん没後20周年の特集でした。


20代のころ、「開高健さんと堀田善衛さんだけあれば他に本はいらない」と思ってしまうほど傾倒していた作家です。以後亡くなるまでずっと読み続け、今でも折にふれては読み返します。


ここで紹介された「人とこの世界」は、「全ノンフィクション」「文と人」に収録されていた覚えはあるものの、くっきり思い返すことができません。たぶん若いころに一度読んだだけのはずです。佐野眞一さんの強いお薦めに魅かれて、休憩時間に本棚から取り出し、まずは金子光晴の章を読み始めるとこれがもう圧倒的。金子光晴の「マレー蘭印紀行」を彷彿とさせるような深く混沌とした描写で読む私の心はヒリヒリと疼きます。


このころ開高健さん30代、その若さで広津和郎 きわだみのる 大岡昇平 武田泰淳 深沢七郎 井伏鱒二 島尾敏雄などという文壇の重鎮たちにインタビューし彼らの文学を描写します。それは文芸評論の範疇では収まらない作家による作家評論なのです。


これまた大好きな金子光晴だからこそ正面からしっかり受け止めて読むことができますが、一読もしていない作家のことなど開高健さんの剛腕にはじきかえされそうです。


こんな人選をし、こんな文章を書かせたのは伝説の編集者坂本 一亀さん(坂本龍一 教授のご父君)なのだそうです。「夏の闇」再読以来の久しぶりの開高健作品、「人とこの世界」の次は何を手に取りましょうか。