座卓


店で使っている座卓(テーブル)は新築の際に京都で作ってもらったものです。座敷のサイズが微妙で既成のものでは用をたさなかったために、長さ高さなど指定しなくてはなりませんでした。


他に小さな部屋と予備には古い座卓もまだ現役です。こちらは私が小さい頃から店にありましたから、たぶん私よりも年寄りかも。輪島塗の螺鈿、猫足です。半世紀を経てまだ古い道具が使われていることは、私の心の中では小さな自慢なのですが、お客様に訪ねられない限り座卓の紹介まですることはありません。本来なら塗り直しをしなくてはならないのですが、塗り直すだけで京都で作ってもらった座卓5つ分の予算が必要と聞いただけで二の足を踏んでしまいます。


お客様のほうでも、器に素養のある方でも塗り物まで、ましてや座卓まで気づく方はなかなかいないのも実情です。いままでお一人だけ件の座卓を眺めて「お宅は創業何年ですか?こんな仕事はいまではあまり見ないですよねぇ」と語った方が。聞けば指物師のベテランでした。


カッシーナのテーブルは見分けられても輪島塗りの価値を判断できない日本。さびしい気もしますがそれが実態ですからしかたありませんね。