レニングラードのチャイコフスキー


TVで録画しておいたマリス・ヤンソンス指揮 レニングラード交響楽団の「チャイコフスキー 4番」1986年日本公演が強烈でした。


レニングラードのチャイコといえばこれ以上はない18番(オハコ)。鳴りまくる管、歌いまくる絹のような弦、叫びくるう獰猛な打。


手元にもムラビンスキーが振った「大統領!」「たっぷりと!」と叫んじゃいそうな世紀の名演CDがあるのですが、それに勝るとも劣らない、いえ勝っているかもしれない4番でした。(確かムラビンスキーの助手として代役であったかも)


ライブは凄い。


指揮者の緊張感とオケの躍動感、聴衆の沸き立つような興奮がいっしょになって画面に踊っていました。


クラシック万年初心者の私にはチャイコフスキーの三大交響曲の内、四番だけが途中で寝てしまいそうになる箇所がいくつかあるすべてが血沸き肉踊るわけではない交響曲です。つまんない演奏者ですとそれはてきめんです。「もしかしたら名曲とは言い切れないかもしれない」などと思っていたのに、ヤンソンスレニングラードで「スマン!私がバカでした。聴く耳もっていませんでした」と平伏してしまいそうに全編通して惹きこまれました。


管出身者(中学高校トランペット)としては、レニングラードのチャイコの管は「もしかして、レニングラードってチャイコだけでオーディションがあるのでは?」と思うほど特別によく鳴り響く気持ちよさがあります。トランペット二人、トロンボーン三人でこんなに鳴っちゃうというのはすべての管楽器経験者の憧れです。今回はシンバルの爺さんも凄かった。「シンバルってこんな高いレベルで演奏できる楽器だったんだぁ」とこれも眼から鱗でした。


楽団員はほとんどがジイチャン。わずかなオバチャンと一人二人の若手以外は本当に終身雇用はかくやというほどジイチャンばかりです。年寄り恐るべしです。しかもレニングラード時代のオケは観客の大拍手に見事にニコリともしないのです。笑ったら損だといっているほどムッツリ。あの時代のソ連ってそうだったなぁぁと妙に感慨にふけりました。


録音しそこなったショスタコービッチの5番が聴けなかったのが悔やまれます。