跡継ぎ


成人を迎える年代の息子娘はいるのですが、今のところ誰も私の後を継ぐ予定はありません。


父の時代は長男は家を継ぐのが当たり前、私の時代もその傾向をまだ引きずっていましたが「無理やり」ではありませんでした。両親から一度も「跡を継げ」を言われませんでしたが、私自身はなにも言われなくても高校時代から引き継ぐもりでいました。


今の時代、この商売をそのまま継ぐのは容易ではありません。拘束時間は長いし、修行が必要だし、お得意様を持っているからといってずっと安泰であることは200%ありません。代替わりで潮が引くようにお得意様がいなくなる店はたくさんあります。メリットがあるとすれば、三代で培った信用と、器、仕入れの様々なルートと信頼関係・・・くらいかも。どれほどそれらが有益でも料理と客商売が好きでなければ絶対に長続きはしません。間違いなく言えることは長続きをさせてこそやりがいのある仕事でもあることを考えると、むやみに「跡を継げ」とは無理強いはできません。


先日もお得意様に「もったいない」といっていただいたのですが、好きな仕事を得ることくらい人生に大切なことはない、ということを思うと、「もったいない」は当てはまらないような気がします。この仕事は私には天職でも子供達に「この商売はいいぞう」とは言えません。


後十数年、私の引退のころに創業100年。いい区切りかもしれませんね。親の背中をみて「やぱっりやってみる」という子が出てきたとしても、親と同じ仕事にはならないほうがいいはず。私の仕事はこの代限り・・・というのがこれからの料理屋の姿なんでしょうね。