隠れ家風料理屋


「隠れ家風○○」と銘うった料理店が現れ始めたのはいつごろからでしたでしょうか?もうかれこれ10年くらいにはなるのかもしれません。


もう下火かも・・・と思いきや、消費者はいまだに「隠れ家風」がお好きなようです。


昔からのまっとうな日本料理店では、お客様同士の顔が見えないのはごく普通のことで、30-40年ほど前からのカウンター割烹のブーム以前でしたら、個室は当然のこと。とはいっても障子、襖、欄間で仕切られたお座敷のことですから、お互いの声が聞こえることも当たり前のことでした。


今の若い方々は日本料理店にカウンターがあることはずっと昔からのことのように思われるかもしれませんが、関西で始まったカウンター割烹が全国に広まったのは昭和40-50年くらいがせいぜいで、それほど古いことではありません(小料理屋さんは別です)カウンター席、小上がりのお座敷でお客様同士が顔をあわせることが当たり前になり、その跳ね返りで隠れ家風が現れたのでしょうか?


まっ、ともかく、私ン処のようにお座敷で饗する料理を代々変わらずに仕事にしている身からみると、世の中は変化をしているようで動いては揺れ戻しを繰り返しているように見えます。


「隠れ家風」といわなくても料理屋はお客様が公にならないことが当たり前ですし、プライバシー保護法を盾に取らなくてもお客様のプライバシーを保つことも当たり前です。


玄関が表通りから直接見えないようにしてあったり、お客様の予約具合で部屋割りを算段したり、お帰りの時間が一緒にならないように段取りしたり、お部屋にどんなお客様がお入りになっているかを伏せたり・・・などということは、隠れ家風というコンセプト上建築上のお題目以上に「気遣い」の範疇でやりくりするものなのです。そういう料理屋の使い方は「隠れ家”風”」しか知らない人々には理解できないのでしょうねぇ。