チャン・イーモウの開会式


北京五輪 チャン・イーモウの開会式は、先日映画館で観た「王妃の紋章」がCG抜き、ライブで目の前に繰り広げられているようでした。スケール感、物量、人の渦、イーモウ監督が俯瞰からにんまり笑ってご満悦で指示しているのが見えてきそうです。ただ、「王妃の紋章」にはコン・リーという妖艶な魅力を発散するアーティステックなスパイスがあったのに比べ、開会式に共産党がイーモウに求めたのは「威信」だけであったのでしょうね。


別の目で見ると、毛沢東時代、荒野に膨大な人民が鍬とモッコを担いで作業をしている人海戦術も脳裏に浮かぶのです。ただ違うのは、演じる大勢の人々の目の輝き、「今私たちは世界に向けて表現しているのだ」という充実感なのが幸いです。


ちょっと前、BSで市川昆監督の「東京オリンピック」をやっていました。国立競技場の夜の風景は、今回の鳥の巣のようにまばゆいばかりの光の中であったような記憶であったのに、久しぶりに見た「東京オリンピック」は薄暗くて記憶とは大違いなのに驚きました。あの薄暗さの中で感動的な閉会式が行われていたのです。


40年という歳月は世界情勢もスポーツ事情も感動の資質も大きく変えていることを改めて感じる北京五輪開会式です。