女優はCGを凌駕する


チャン・イーモウの映画を劇場で観るのは初めてでした。


「王妃の紋章」   映画館で観なければ損をする、というほどの豪華絢爛、大迫力の映像、イーモウお得意の華やかで色彩豊かなセットと衣装のてんこ盛りに加え、圧倒的な数の迫力が迫ってきます。一部では北京オリンピック開会式のプロデュースもするらしいチャン・イーモウの力で、中国の国力と歴史を見せつけるためのプロパガンダ的要素をタップリもっているなどとも言われるそうなのです。


確かに映像的な迫力と歴史的な国力という意味では国の威信は充分に発揮されているのでしょうが、ストーリーは家族内不倫と跡目争いが絡んだ家族の争いのお話。家族のいざこざに何千何万の軍隊が虫を殺すようにバタバタと死んでいく、息子といえども跡目のためには容赦なく、連れ合いには時間をかけたトリカブト。「これが中国」と思うと寒々としたプロパガンダにも思えるのです。同じ頃(というかちょっと下った)日本では、同じ家庭内不倫を最古の王朝文学の金字塔にしている(「源氏物語」の光源氏藤壺・・・ね)ことを思うと、じっとりちんまりしていても国の威信よりは文学がいいなぁ・・・と感じるのは日本人の感性なんでしょうね。


しかし、それにしてもCGと物量、大量人員と豪華セット、豪華ホンモンの迫力よりも、コン・リーの迫力に打ちのめされました。


あの物量を見ていると、中国の歴史で300人とか3000人の事実が30万人と言い伝えられるのもやっぱり中国らしいというのもあらためて認識してしまいます。