ガージェリー 名前の由来


店で使っている生ビール「ガージェリー・ビール」のガージェリーはディケンズ「大いなる遺産」の登場人物に名前の由来があります。


とはいっても、私は「大いなる遺産」は未読。先日BS録画で観た映画版「大いなる遺産」でやっと確認できました。ディケンズの映画化は大好きなデヴィッド・リーン作品。リーン作品は「旅情」以前は「逢引き」しか観ていませんので、当然終戦直後に製作された「大いなる遺産」も初めてでした。


現れたガージェーリーは、主人公ピップの育て親の鍛冶屋。職人らしい実直で身の程をわきまえた男です。さらに「ガージェリー・ビール」の二つの銘柄スタウトとエステラのうちのエステラという名前も、この名作の中に出てきました。ピップが恋焦がれる女性がエステラです。


ガージェリー、エステラと聞いて「ああ、あの・・・」とすぐにピンと来るほどの読書家であればたいしたものですが、そういう素養のない私はビールを使い始めて半年目でやっと名前の由来が確認できました。なにか奥歯に挟まった異物がとれてスッキリした感じ。



ところでこのガージェリー・ビールはエールです。造られているビアスタイル21の佐々木社長とお話をしていて初めて知ったのですが、エールには泡は大切な要因ではないのだそうです。日本人はビールと言えば泡が大切とすぐに思い込みがちですが、それはラガーだからいえるお話、英国のパブで飲んでいるビールが泡で満たされているか・・・というとそんなことはありません。店でも泡をタップリ入れるよりはビールそのものをタップリ入れるようにしています。ビールがサーブされてきて「生ビールってのはねぇ泡が大事なんだよ」と話題をふられると困ってしまいます。私ン処では薄い泡しか乗っていませんから。日本人には「すべてのビールの味わいは泡で決定する」かのように思われている方が多すぎます。


同じようなことはたくさんあります。同じビールが、ヨーロッパでは常温で提供されるというのはそろそろ一般常識になっているかもしれません。さらに例えば、カレー。カレーというのは総じて「次の日が美味しい」というのも日本のカレーについてのみのお話です。インドで「次の日」などといったら怪訝な顔をされるはず。これいうお話は日本酒の純米信奉や辛口信奉にも通じるところです。日本の今の常識を伝統的な長く続く世界的な標準と思うのは大きな間違いなのですね。