閉店


フレンチの名店「ジョージアンクラブ」が閉店するのだそうです。


話題のミュシュランでも一つ星。料理だけでなく外装内装、サービス、ワインなどなどすべてを含めてグラン・メゾンと呼べる日本では数少ないレストランです。出来たばかりの頃、写真で見る室内の豪華さだけでなく、ワインリストの充実ぶりとその値段のお手頃なことに衝撃を覚えました。さらに、夏場の一ヶ月のお休みというのも当時の日本では(今でも)考えられない店のあり方だったのです。


閉店の理由は業績の不振などではなく、オーナー吉村さんの意志なのだそうですが、大会社でなく個人が営むグランメゾンがなくなってしまうというのは日本のフレンチ業界にとっても大きな損失です。


よくあのクラスの際立ったフレンチレストランには、絶賛の言葉と同じくらいの心無い批評も目に付きます。ありがちなのは「コストパーフォーマンスが悪い」「高い」「あの味ならもっとお手頃で美味しいところを知っている」などという言葉。私に言わせれば「一昨日(おととい)おいで」と大きな声で言いたくなるほど的外れで読む価値もない批判です。


料理だけで勝負するのと違って、すべてにオーナーの美意識を体現するレストランを実現することがいかに難しいことなのかが全くわかっていません。ああいう美意識を薄っぺらでなく表現することだけでさえ奇跡的なのに、食材の値段だけでコスト・パフォーマンス云々は全く無意味です。例えば、今回三ツ星をとったあるグランメゾン、フレンチレストランの赤字がいかほどのものか・・・・、バックのある大企業の文化事業に対する意欲がなかったら存在し得なということが理解できれば、同様のグランメゾンは「なんてお手頃なの」とウットリしてもいいはずなのです。レストランを批評的にではなく、楽しむために利用できる人にとって「ジョージアンクラブ」の閉店は宝物を一つ失ったことになるでしょう。