名演その25〜やさしい歌声

clementia2007-11-22




前回黒っぽいジャズ・ヴォーカルの極めつけのようなアルバムをご紹介しましたので、今回はやさしい歌声はいかがでしょう。


オランダが生んだ歌手アン・バートン「バラード&バートン」 はんなりとやさしく語りかけるような歌声にはじめて触れたのは30年前。アルバムは全編と通してバラードとミディアムテンポで演奏され、サラ・ヴォーンの「枯葉」が身体を激しく縦ノリに揺さぶられるのに比べ、ゆったりと横に揺れるように静かに乗れるのです。ピアノのルイス・バン・ダイクのリリックで軽やかなバッキングが彼女の歌声をより引き立てて素晴らしい。バラードというと薄暗い煙草の煙るクラブのカウンターでハード・リカーとともに聴くようなイメージがありますが、アン・バートンのバラードは子供たちが寝静まった夜、リビングでシャンパーニュでも傾けながら聴いていたいような上質さがイメージされます。


若い頃、デートの時に車に常備しておく決め技カセットテープの中には、ビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」とともにアン・バートンは必須アイテムとして必ず入れてありました。


40年近く前のアルバムを今聴いてもまったく違和感のない凄さ。「癒し」なんて言葉がもてはやされる遥か遥か昔から私のそばにはこのアルバムが存在しました。


ジャズ・ヴォーカルになじみのない方にも強くお奨めできる一枚です。