日本酒開眼


「彼はねぇ、もう日本には何十回も来てるんですが、この前こちらに伺って初めて日本酒を飲むようになったんですよ」ヨーロッパのご友人をお連れになったお得意様は大の日本酒党、日本酒の美味しさを伝えられるようになったことが嬉しくて仕方がないという風に見えます。


「以前は日本酒には”hot”と”cold”の二種類しか味の違いがないと思っていました」と、この方はワインの経験がよほど豊かなのでしょう、味わいの表現にワイン的な語彙がたくさん出てきます。菊姫 鶴乃里平成16年の熟成と黒龍二左衛門の三年の熟成の違いを一口味わっただけで正しく理解し、日本人の10倍の言葉で美味しさを(不味さではないことが大切)言い表せます。


「この店で飲む日本酒はワインと同じようにこことこことここの三箇所で味と香りが楽しめますね」と口元、喉元、喉を指します。


「外国人に日本酒の繊細さがわかるはずはない」とか「外国人の舌は大雑把だから」とか「ワインよりやっぱり日本酒だよねぇ」とおっしゃる方々が「甘い辛い」でしか日本酒が理解できないことも多かったりするのを見て影でこっそり笑ってしまいます。


外国人だから日本人だから、ワインだから日本酒だからではなくて、区別なく美味しいものを理解できるかどうかは個人の能力と経験値によるのです。