早く卒業しましょう

clementia2007-06-21



近隣の愛知県設楽の蔵、関谷酒造の純米大吟醸蓬莱泉「空」(クウ)というお酒があります。全国区で有名というほどではないのですが、愛知県の東部、静岡県の西部を中心に絶大な人気のあるお酒です。華やかな香りとさわやかな飲み口、豊かな旨みがどんな方にもわかりやすいというのが人気の秘密です。加えて生産量が少ないためにどこでも入手可能ではないことも消費者の購買意欲をそそっているのでしょう。


面白いことに「うまいお酒=辛口=新潟酒」の20年前の思い込みが未だに日本中に蔓延しているのと同じように、店のリストに「空」を載せているだけで「おお!空おいてあるじゃん」と、日本酒のラインアップが充実していると思われてしまうような傾向がこのあたりにはあります。森伊蔵がどんなにプレミア価格でも人気に衰えがみえないのも同様に、人の味覚がきわめて保守的で定型が出来上がるとそれを崩すのは時間がかかることをここでも思い知らされます。


とはいえ、私ン処のようにお酒にもそこそこ力を入れている店にとっては、「空」は7-8年前にすでに卒業したお酒と言っていいお酒です。「もう”空”では勝負しません」と公言して久しいのです。


店で「空ないの?」のご注文には、「空は近隣のたくさんのお店でおいていらっしゃいますのでそちらにおまかせしておきます」と、ちょっとスノッブに言いつつ、お奨めするのは「蓬莱泉」とだけ書かれた純米大吟醸精米歩合は45%で留め、12度に安定した洞窟に寝かされて熟成した逸品。とある一軒の酒屋のためのみに少量作られたものです。


稀少だからいい・・・・のではなくて、より美味しいから飲んでいただきたい蓬莱泉です。


それでも「”空”が飲みたい」と”空”を語るお客様がたくさんいらっしゃる・・・という恐ろしい地域限定(愛知県東部静岡県西部)嗜好を早く乗り越えたいと思っています。