敷居の高さ


店の玄関はあえてちょっと入りにくい風情にしてあります。前を通りかかった方がふらりと入りやすい・・・というのは多くの店の基本でしょうが、ふらりと入ったはいいけどお財布の中身が気になって楽しく食事ができない・・・でも困ります。


夜のお座敷の料金はだれでも気軽に使ってもらえる値段ではありません。「普通よりはちょっと大目の予算が必要かもしれません」という気持ちと、「予約をしていただいたほうがより楽しめるかもしれません」という思いも込めての「ちょっと入りにくい玄関」であるのです。


先日玄関で躊躇しつつお入りいただいた一見フリーのお客様は、お酒のリストを見て盛んに「高いなぁぁ、凄く高いなぁぁ」と終始おっしゃっていました。直接はっきりとおっしゃっていただくとかえって気持ちもいい感じもします。絶対価格は確かに高いのですが、相対価格はあまり高くはないという自負をもっていますし、お酒の値段も店の敷居の高さや料理の値段とリンクしているのです。この値段の料理に見合う内容を充分にもっているお酒のラインアップと質の高さを求めれば、この値段は特に高いとは思っていません。敷居の高さを認識して予約をしてくださった方々のための価格でもあるのです。その辺も含めた店造りでなくてはならないと思っています。ふらりと入って好きなものを注文し、適当に軽く飲んで食べるのが料理屋の正しい使い方と思っておられる方にはずいぶん使いにくい店かもしれません。