自ら名乗る


若年性アルツハイマーではないか?と思うほどこのところの記憶力の減退は激しくて、映画俳優の名前が思い出せないくらいならまだしも、大切なお客様の顔と名前が一致しなくて慌てることが頻繁です。



若い頃友人の結婚式の司会を頼まれてホテルの担当者と打ち合わせること数回、当日も張り付くようにその担当の方とは連絡をみつにとって手助けをしていただいたことがあります。その日から一ヵ月後、同じホテルに食事に出かけたとき、その時の担当某氏を見かけて声をかけたたのですが、どうやら顔はなんとなく思い出せても名前やいつどの宴席でまでは思い出せていない様子が見て取れます。「えーーー!あんなに何度も会っているのに・・・」と心の中で思ったわけですが、今考えれば、同じような結婚式をその後の一ヶ月の間に何組もこなして忙しく働いている彼が一つ一つをそんなに鮮明に記憶しているわけがありません。


同じことが今の自分にも言えます。ひとりひとりのお客様に親密にサービスをするのは当然のことで「あなたが今日世界中で一番のお客様です」と思っていただければその日のお席は大成功なわけですが、実際にはすべてのお席で「世界中で一番」をめざしているわけで、お客様が「世界中で一番を忘れないわけがない」と思ってもすべてのお客様との会話を完璧に覚えておくことは不可能なのです。さらにこのロートルの記憶力ですから。ご自信の名前での予約でなく、何人かのお客様の中の一人で二回くらいお越しいただいたお客様が時に「俺のこと覚えている?」などと言われても「はい、その節はありがとうございました」と言いつつ記憶とPC検索を駆使して頭をフル回転させていたりするのです。私のように半分ボケたような板前の記憶に留めようと思われたら、一見はお得意様と来店し、即自分の名前で裏を返し、三回目から馴染みになる・・・という昔からのお決まりはとても大切なことです。



そんな教訓があるものですから、プライベートの時間に街でお客様にお会いした時には「弁いちです。先日は・・・」と必ず自ら名乗ることを忘れないようにしています。特に白衣姿の私とオフの私のギャップは自分が思っている以上にあるようですので。。。お客様の記憶力を試すようなことをするわけにはいきませんよね。