海堂尊〜中野翠


文筆家がTVに現れて自作について語るというのは、TV番組の俳優や映画の監督に比べて極端に少ないように思います。写真で作者は知っていても動く姿、声を聞くことは稀です。


数少ない作家の言葉が聞ける「週間ブックレビュー」に、たまたまもう少しで読み終わるところだった「チーム・バチスタの栄光」の著者、海堂尊(カイドウワタル)氏がインタビュー・ゲストで登場しました。


チーム・バチスタの栄光」は「読んでます」というのがちょっと恥ずかしいほどのベストセラー、「本屋大賞」にも選ばれた本屋に山積みされていた心臓外科手術をめぐるサスペンス。著者が現役の医者でなければ書けないような病院内部の人間模様や専門知識がちりばめられた快作です。


「どんな人だろう、海堂さん?」と想像するのは、net上でした知らなかった方に初めて会うようなワクワク感があります。現れた海堂さんは病理科医師(と紹介されたような記憶)というのが素人考えで妙に納得してしまうような風貌と語り口の第一印象ではあませんか。ピッタリ。人と接している臨床科医というよりも細胞、組織に向き合っているという雰囲気・・・・「いや待てよ。お得意様の病理の先生は入り込むとスッゴク親しみやすいのに」と思っていると、語れば語るほど、時たま見せる笑顔や肩の力の抜け具合がいい感じです。人間と向き合うのが苦手であれば、あれほどキャラクターが際立った作品が書けるわけがありません。ともかく、今読んでいる本の作者その人が語っているのが見られるのは素敵です。これで作品のクライマックスがより楽しめたことは言うまでもありませんでした。



その日の夜は中野翠さんの新作「よろしく青空」を通読。新作というよりも長年中野さんが積み重ねていらっしゃる週刊誌のコラム一年分の単行本です。欠かさず読むことすでに何年でしょう。。。。昨年一年思ったこと、日記に書いてきたことを中野さんの目を通して再確認する楽しい時間です。


昔中学生くらいの時、高校生だった姉の友人たちは、三歳しか離れていないのにとんでもなく世の中に長けていて、私の数倍の音楽と数十倍の難しい本と接し、濃密な議論の果てのエッセンシャルな知性を持っていたように思い込んでいたわけですが、中野翠さんの存在というのは私にとってそんな”永遠の姉の友人”なのです。彼女の言動は私を揺さぶり、「まだそんなところでウロウロしてんの?」と言われそうな雰囲気を持っています。


例えば、姉歯ヒューザー〜藤田建設の証人喚問を見て
「私が呆れたのは、証人喚問を受けた四人とも「作品」(=商品)に対する愛着がほとんど感じられなかったことだ。ビルを建てるという仕事についていながら、自分が世に送り出した「作品」のその後についてはほとんど関心外のようだ。口にするのは「経済設計」「経済効率」「コストダウン」といった言葉ばかり。抽象的な世界の中でしか生きていないのだ。法に触れるかどうかは考えても、その「作品」が世の中にとっていいものかどうかは考えない」


胸がすくではありませんか。