芋虫


そろそろ漬物には白菜の塩漬けが登場し始めます。白菜の付け根を四つ割にし、軽く干し塩を当てようとすると、そこに大きな芋虫が。


最近では野菜に虫がついているのを発見することはめったになくなってしまいました。野菜に虫がつくのは当然のことで、自然志向の強い方でしたら、「虫が食べるほど美味しい野菜なのである」と言いそうです。ところがスーパーマーケット的には「虫がついていた」と苦情が出ても不思議でないご時勢でもあります。農家さんは農薬をバッチリ効かせて美しい状態で市場に出そうとし、主婦は新鮮と無農薬を望みながら虫がいては身の毛もよだつ・・・というのが本当のところでしょう。



以前に高名な中華料理屋さんで食事をしたときに、青菜の炒め物が出て、皿も終わりに近づいたころ、青虫が入ってしまっているのに気づいたことがありました。よく存じ上げている料理人さんの店でしたので、残った青菜で青虫を隠してお皿を下げていただきました。「青虫が入っていましたよ」と伝えれば、野菜の下ごしらえをする追廻しの若いスタッフはひどく怒られ、その気質を存じ上げている調理長と奥様は平身低頭で謝りにテーブルに来られるであろうことが読めます。調理長はもちろん洗い場さんも気づかなければいいな、と思いつつ。同じ料理人としての感覚なのでしょうが、青虫くらいで若いスタッフの不可抗力をあげつらって苦情を言うのはいかにも辛いことです。死ぬわけじゃないから・・・と思ってしまうのですね。それ以外はいつものように十分すぎるほどの出来でしたから。若いスタッフの将来ためとか、店のちょっとした気の緩みを正すために苦言を・・・なんて絶対に考えません。これってあくまで料理屋側の感覚なんでしょうね。