25年前のデザート


もう30年以上もご贔屓にして下っていただいているお客様の法事がありました。亡くなったお父様の七回忌。


そう言えば・・・・と思い出したのが、私が修行先から帰ってきて間もない頃のこと、デザートに出したアイスクリームに苺とキーウイのソースを彩りよくかけたものを、そのお父様がとても褒めてくださったことがありました。


今から25年も前、和食のデザートは水菓子といって、季節の果物を切ったくらいが当たり前の時代でした。それから15年くらいを経た頃でも全国で名の知れた超有名料亭でさえ、デザートは果物であったのです。和食のデザートに工夫を凝らし始めたのはこの10年がいいところではないでしょうか。


私自身は修行から帰ったばかりで鼻っ柱が強く、「切っただけのデザートは絶対出さない」とその当時からも思っていたのですが、それでも当時は手に入れることが難しかった(流通が今とはまるで違います)ハーゲンダッツのバニラアイスに苺とキーウイを裏漉ししてレモンで味を調えたものを自慢げに出していたのでした。当時はレディー・ボーデンだってクリスマスのときの特別なアイスクリームくらいの位置で、シャーベットならまだしも自家製でアイスクリームなんぞ作れるとも思っていませんでした。ハーゲンダッツのポジションもコンビニでいつでも買える今とは全く違うものでした。たった25年前でもそんな時代であったのです。


それから四半世紀たった今、お出ししたデザートは本わらび粉を使ったわらび餅をココナッツミルク、牛乳、生クリームのソースに浮かべ、苺とキーウイのソースをかけたもの。わらび餅をきな粉でなく何か別の形で・・・と思いついたデザートです。とはいえ、苺とキーウイのソースは相変わらずであるというのが全く進歩のない私の辛いところ。同じソースを使っていたんだぁ・・・と思い出しました。