小さなガッツポーズ再び


なんなんでしょう。


「美味しかった」という言葉をかけていただいても、普通にありがたいお客様と、小さくガッツポーズを作ってしまう嬉しさがあるお客様があるのです。当然、後者の方のほうが心に残ります。1000円前後のランチでも、「必ず裏を返してくださるな」と思うお客様の「美味しかったよ」はどこかニュアンスが違うのですね。


昨日はランチと夜のコースの両方に一見でそういうお客様がいました。


ランチのほうは60年配のご夫婦。奥様が「いやーー、美味しかったわ。あのお軸とお手紙を額装したのは同じ方の作なの?」そこでお手軽なランチでもひとしきりの会話ができ「美味しかった」の気持が伝わってきます。もしかしたら夜のお座敷にも予約をしてくださるかもしれないという予感を感じさせてくれます。


夜は一席だけ空いていたカウンター席に「予約がないんですがいいですか?」と入ってこれらたカップルのお客様。「お飲物はいかがしましょう」の問いかけに、「車ですからお茶で結構です」と、静かにお茶だけで料理を召し上がっていただきました。普通においしそう食べてくださるのですが、口にされたときの笑顔の雰囲気がなんとも美味しさを表現してくださいます。デザートまで出したときに一言だけ「どの皿も私たちが普通にお目にかかる素材ではない驚きに満ちていて美味しかったです」たった一言、一見のお客様なのに料理人の心をグワァシっとつかんでしまいます。たくさんの美辞麗句よりも遥かに嬉しい一言です。


料理人の心をつかんだ方々は一言でお得意様になります。