"NO"とは言わない店


お客様のご要望には出来うる限り”NO”とは言わない店でありたいと思っています。


森伊蔵あるなら梅割りにして」と言われても、「日本酒好きなんだけど酔っちゃうから黒龍しずくってのをロックで頂戴」と言われても、「天使の誘惑のお茶割り」と言われても、「銀の水にパセリ入れて」と言われても。。。。。


「お客様そりゃ・・・・」という言葉をグット飲み込んでにこやかに「かしこまりました」という商売上手(?)な板前なのであります。良い悪い、そうあるべきこうしなければならない、正統邪道はさておき、「好み」なのですからお客様の心地よさを第一にすべきだと思うのです。そこからちょっとづつ「私の好み」の方向に修正させていただく努力も怠りませんが。



先日あるお客様に「今度行くときまでに○○ってお酒入れといてもらえない」とお電話をいただきました。


「○○」?・・・聞いたことありません。日本酒についてはそれなりにアンテナを高くしているつもりですので、注目株のお酒は「機会があれば手に入れる」もしくは「なんとしても流通ルートを確保する」ようにしているつもりです。そういうアンテナにひっかからないお酒を「そりゃ大したことないお酒ですから飲むだけ無駄ですよ」などと”NO”とは言わない店としては決して言いません。もしかしたら隠れた名品の可能性だってあります。


で、調べた藏元に連絡を入れ、近隣の酒販店を教えてもらいました。出てきたのは酒販卸店。そちらに電話して小売店を教えてもらうと、どの店もお付き合いをしている店ではありません。というよりどちらかというととうちゃんかあちゃんのひっそりとしたお店。自意識過剰な板前は、個人名で○○を取って貰い、店の名前の入った営業車を使わずに件の店に出かけると、想像通り私ン処で使いたいようなお酒は一本もない薄暗くて酒瓶にうっすら埃がかぶっているような店でした。


値段を見ても、ラベルを見ても、netで蔵元のサイトを見ても大きな期待はできそうにない○○なのですが、”NO”とは言わずに入手してお客様にお出しします。きっと一口飲んで「あれ?こんなもん?」・・・と、きっとそこで普段お出ししているお酒のレベルがどれほどのものか理解していただけるのではないかと、いやらしい期待をほんのちょっとだけしつつ○○を冷蔵庫に寝かせておきます。


ああ、やなヤツだ。