注文編その2

テーブルにつき「お飲み物はいかがいたしますか?」聞かれたとき、多くの方がお酒を注文します。日本料理店ならまず(とりあえずではなく)ビール、そして日本酒。フレンチイタリアンならワイン。


めったに訪れない高級店でのソムリエさんとの対話を苦手にしている方は多いようです。分厚いリストを渡されて、値段を見ると恐ろしいほど「0」が並んでいる。何を頼んだらいいのか全然わからない。ソムリエさんに値踏みされているような気がする。で、結局「シャブリ?・・・前に飲んだことあるような気がするから」と「“これで”いいです」(“これが”いいですではなく)・・・・なんて最悪。有能なスタッフとお宝を目の前に素通りするようなもんです。有能なソムリエさんは決して敵ではありません。お客様がソムリエさんに気後れするのと同様にソムリエさん自身も未知のお客様にはどのように接するべきか常に頭を悩ますものなのです。実際にはどっちもどっちなのですね。


ソムリエさんの力を引き出すにはなんといっても情報を提供することです。(こちらの知識をひけらかすことではなく)最低限の情報は、カップル、グループでどれほどの分量が飲めるかということ、予算はどのくらいかということの二つだと思います。リスト閉じて「お任せします。何か選んでください」でもいいのですが、お奨めするにもどのくらいの予算がいいのかがわからないのはちょっと困ります。最上の一本といわれてワインをお持ちした後「もう一本」と言われるのも戸惑います。最初から二本飲むことが予想できると組み立て方も変わってくるのです。


さらに、赤ワインがいいのか、白ワインがいいのか、シャンパーニュがいいのかも教えてもらうのは助かります。さらにさらにもう少し踏み込んだ情報、若々しいのがいいのか、熟成したのがいいのか、ブルゴーニュがいいのか、ボルドーがいいのか、好みがあれば伝えられればさらにいいでしょう。そこまでいけばセラーの在庫から今一番のお奨めを紹介してくれるはずです。自店のセラーのワインのことはソムリエさんが一番よく理解しているのです。「私はこれが好き」もいいのですが、お奨めの中には思わぬ発見があることがよくあります。


私自身はソムリエさんとワインを決めるときは、(夫婦二人の場合)「最初に白ワインかシャンパーニュをグラスでお願いします。赤ワインはこの辺の予算で(と指でワインリストから希望の予算くらいのワインを指差します<これ大事)一本、どちらかと言うと熟成感のあるブルゴーニュやポムロールが好きですがお奨めを紹介していただけますか?」と。すると多分ソムリエさんは「19○○のヴォーヌロマネ、ドメーニュ○○は今熟成が・・・」とか「ポムロールでしたらシャトー○○が隠れた名品で・・・」とかいうことになってこちらの知識にあわせたお話を展開してくるはずです。ここでソムリエさんと盛り上がりすぎてよく連れ合いに「話が長すぎる」と怒られるのですが、そこまでいけば次回訪れても必ずソムリエさんは覚えてくれているはずです。無理にワインの知識をひけらかさなくても力のあるソムリエさんはちょっとした言葉の端やワインの選び方、テイスティングの仕方でこちらのレベルを簡単に推し量ってくれ、それに合わせたお話をしてくれます。無用な自慢話はかえって恥ずかしい想いをするだけ・・・というのは痛い経験をたくさんして覚えた事実です。