スッポン

スッポンはここ浜松の名産と言っていいかもしれません。全国的に名高い鰻の養殖はすでに浜名湖近辺ではほとんどされていないのに対して、スッポンは全国的に見てかなりすぐれた業者がこの地に存在しているのです。京都の老舗「大市」さんなどはここのスッポンを使っていることでも有名です。


スッポンは生きたままさばいて、爪と食道、生殖器、胆のう以外のすべてを使います。湯通しをして丁寧に薄皮をはがし、爪昆布とたっぷりのお酒と水でコトコトと煮込みます。それ以外何も入れなくても濃厚な出汁が取れます。この出汁がスッポンの一番の味わい。焼き葱とスッポン、餅だけでスッポン鍋でもいいのですが、姿がグロテスクだと言って、一口も召し上がれない方がいらっしゃるものですから、今、献立ではスッポンを玉子豆腐で寄せてお椀にしています。もちろん玉子をスッポンのスープで割り、出汁もスッポンスープだけ。本体のエキスはすべてお椀の中に凝縮させます。こうすると、姿が直接見えなくて、食べず嫌いの方も食べられる可能性があるのではないかと。


大事なのはお召し上がりになるまで、「スッポンです」とは明かさないこと。「見ただけでダメ」とか「聞いてしまっただけで食べられない」では、もったいないほど美味しい食材です。「コラーゲンたっぷりですから、お肌には最高ですよ」と申し上げて、「んじゃぁ」とトライするくらいのチャレンジャーばかりだといいのですが、なかなか。