予約

「予約してないけどいい?」


一見でフラッと玄関をくぐるお客様は大概そうおっしゃいます。


店構えからして、予約が必要なんだろうな、と思っていらっしゃる証拠です。


部屋に空きがあれば「どうぞどうぞ」とお入りいただくのですが、よく書くようにこの地の方々はホントに予約が嫌いです。「すべての店は予約など要らない」「予約という言葉はこの地の辞書には存在しない」・・・・などと思うほどです。


考えてみると、回りの店のほとんどは予約が必要ないか、予約がなくても気軽に入ることができるカウンター席のようなスペースを設けている店ばかりで、予約のみで商売をしている店は極少数です。


昨日お見えいただいたお客様は、つい先日予約なしのフリーでお見えいただいた方でした。


「また予約してないけどいい?」


カウンター席だけが空いていましたのでお席を用意しました。


つい先日とはいっても、予約のないお客様は献立も口頭で若い者に指示してしまいますので、記録も残っていません。他のお客様の料理を進行させながら、必死で前回お出しした料理を思い出し、違う献立、違う器、お気に召したお酒などを頭の中で組み立てます。


まっ、なんとかそれなりに滞りなくお召し上がりいただいたのですが、お客様も「それなりのもの」しか期待していないような節があります。


私ン処にお見えになる95%の予約をしてお見えになるお客様は、「それなり」では許してくれない期待感をもってご来店してくださいます。


「予約」は「期待」でもあるという緊張感を生みます。


ご予約をいただいた時点で、これまでのご来店のデータを確認し、部屋割りを考慮し、料理、お酒ラインアップを考え、好き嫌いを思い出し・・・・と準備をします。


同じ料金をいただくのであれば、決してお安い値段ではないだけに、ちゃんと準備をさせていただかなくてはいけません。


お出かけになる前に「今日、空いてる?」の電話、それだけでもずいぶん違うものなのですよ。