歯車が一つ
一ヶ月ほど前あるレストランへ家族で伺いました。高速道路も使い一時間ほどかかる場所ですから「わざわざ出かける場所にある」といってロケーションです。
初めての予約でしたから、入るなり「予約をさせていただいた○○です」と告げても笑顔がない。
まっ、そのくらいのことなら・・・・と、通された席は出入り口に一番近い場所。
まっ、ガラス越しのキッチンがよく見える場所だから・・・・・と、出されたおしぼりが、暖かいような冷たいような微妙な温度。
まっ、大事なのは実質的な内容だから・・・・と、シャンパーニュを注文すると、このクラスのものしてはキリッと冷えていない。しかも、クーラーに入れてくださらないので温度が着々と上がってきてしまう。
まっ、肝心なのは料理だから・・・・と、メニューから選び出すと、注文するたびにキッチンのシェフに聞き「申し訳ありません。○○は終ってしまいました」「○○は二人前だけあります」と、18:00の入店なのにメニューがそろっていない。
まっ、祭日でもあるから市場も休みだし、味が要なのだから・・・・と、注文を終えて待っていると、各々が注文した前菜が同時に出てこないので皿を目の前に皆がそろうのをしばらく待ってしまう。
まっ、美味しければいいのさ、評判って聞いたのだから・・・・と、食べ始めると、前菜はそこそこなのですが、魚料理などワインとの相性を考えても二味濃い・・・・というか塩辛い。
シャンパン、ワインは放ったままなので私が家族にサービスする。
調理場の人数が少なさそうなので料理を気長に待つ。
サービスも人数が少ないので手がすいていそうなときに気を使いながらお願いをする。
だけど、お得意様らしいとある有名人にはサービスが笑顔を振りまき、シェフはその席には自ら料理を運び長々と説明やお話をなさっている。
料理一つ一つにコメントしてしまうと長々と愚痴を言ってしまいそうなので、まっ、それは置いておいて・・・・
と、
こう書いてしまうととんでもないレストランに思えてしまうのですが、全体にはそんなにひどくはないのに歯車がちょっとづつずれてしまっているという感じなのです。
キッチンとサービスにもう一人づつメンバーがいて手が回り、笑顔をちょっと増やすだけで印象は劇的に変わると思うのです。こちらがお得意になればサービスも違ってくるのでしょうが、ほかのお客様へのサービスが見えるレストランでは、えこ贔屓が見えないように、見えるならそれぞれのお客様に「あなただけ」と思わせるようなサービスまでできれば大したものです。
などというお話はいつも自分自身にふりかかるものと思っています。
レストランで「あれ?」と思う諸事項は「お前ン処はどうなの?ちゃんとやってんの?」の問いかけに変えています。冷や汗が出ることしばしばです。
歯車のちょっとしたずれ、ボタンの掛け違え、少しづつ積み重なって料理店はずるずるとだめになってしまいます。本当にちょっとしたことただったりするのです。でも、それが三つ重なっただけでお客様はリピーターにはなってくださいません。
有名人が二組、知り合いの料理屋さんが一組お客様でいたレストランでそんな風でした。TVで激賞されていても、信頼している方の紹介でも、私が「もしかしたらあのときだけかもしれないから、もう一回行ってみよう」といっても家族はだれもついてきてくれないでしょう。
料理店を営むって難しい。
「お前ん処は大丈夫か」「お前ん処は大丈夫か」と呪文のように唱えてしまいます。