何が伝わるか、何を伝えるか


松井のNY ヤンキース入りがメディアを賑あわせています。


野球には全く興味がないのでよく知らないながらも、日本での松井の実力とメディアへの対応の上手さは大リーグ入りについても例外的に好意的な目に捉えられているようです。


それにしても、たった7年前の野茂のドジャース入りの時との違いは何なんでしょう。ずいぶん変わったと思われるイチローのときに比べても別格です。


すでに活躍が約束されたような報道のされ方、NYでも皆が注目しているかのような伝えられ方にはいつものように疑問がわきます。


野球でもサッカーでも日本と現地での報道の温度差の激しさにはヘキヘキします。本当の事を知りたい。


と思っていたら、いつもその日記を拝見している、web日記界の良識とも言うべきこの方の日記にこんなことがかかれていました。

TVで、ゴジラ松井アメリカTV出演している様子が日本のニュースでも流れていた。「Late
Show With David Letterman」にゲスト出演したというのでビックリ。ゲストに出るのはアメリカでも有名人ばかりの人気番組である。しかし、よく見ると、「ゴジラ松井がNYに来た10の理由」というテーマで、番組の人気コーナー「Top 10 List」のゲストだったようだ。松井が、日本語で用意された原稿を読み上げ、英語訳が画面に出てアメリカ人が笑うという趣向。


「In NY, I feel no pressure to speak English(だったかな?)」(NYでは、英語話さなくてもいいから)というのには大笑い。ま、「Late Show」は、心温まるような番組ではなく、シニカルで辛辣なジョークが売り物。NYのタクシードライバー(外国人ばかり)にジョーク読ませて笑い者にしたり、ドイツ訛りの男に英語の有名なセリフを読ませて笑ったりするようなところがある。番組のTop 10 Archiveを見ても、ゴジラ松井が出演した14日のTOP10リストは空白。日本のニュースでチラっと見ただけだから、正確なところは分からないが、ゴジラ松井も、珍獣として単なる刺身のツマ程度の扱いだったのかもしれない。


これなら納得できます。


日本野球界のスター選手など大リーグでの実績が全くないうちは、この程度のアメリカ人の認識・・・・当然のことなのでしょうねぇ。


すべての日本のメディアが「松井が有名TV番組にも出た」としか伝えていませんでしたから、私のような野球門外漢、アメリカ事情に疎いものには、現地アメリカかなりが好意的であると勘違いしていました。


もう一つ、アメリカの認識と日本の認識の差を知った記事を一つ。


マーティン・キナート氏のコラムからの抜粋

訳者の演出による特別に愉快な場面は11月17日のことだった。試合を中継した日本テレビが、長嶋茂雄バリー・ボンズに話をさせた。


長嶋がボンズにホームランを打つ「技術」について質問すると、ボンズは逆に「ホームランを打ったことがあるか?」と聞いた。すると通訳の女性は、「ホームランいっぱい打ちましたね、監督も……?」と訳した。
通訳がボンズの質問を正確に、忠実に伝えたくなかったのは言うまでもない。その質問を聞くかぎり、ボンズは自分がどういう相手と話しているのかも、日本の伝説的存在が生涯でホームランを打ったことがあるのかどうかも、わかっていなかったからだ。


続いて、ボンズは長嶋の現役時代のビデオを見せられ、スイングについて感想を求められた。ボンズはこう答えた。
"I like that. Dead pull hitter...He only pulled the ball."
これは、「僕の好きなスイング。引っ張って打つわけですね」と通訳された。でも実際は、ボンズは「好きです。100%引っ張るだけの打者だったね」と言ったのだ(つまり「流し打ちができなかった打者」という意味にも取れる)。ボンズの発言の後半は、明らかにほめ言葉というわけではなかったが、そのようには通訳されなかった。
ボンズはさらに言った。
"I'd like to see that swing against American pitchers, though..."
その続きには、メジャーのピッチャーにはあまり通用しそうにないスイングだという意味が込められていた。でも、そのニュアンスも通訳されなかった。
「あれはアメリカ的な感じがしますよ……すごく……そのスイング」。それを聞いた長嶋は、喜んで
"Thank you." と言った。もちろん、日本テレビは崇拝する長嶋をできるかぎり美しく見せたい。だから通訳者は、ボンズの発言をおそらくわざと変えて、自分の雇い主が聞きたい内容にしたのだろう。そうでなければ、ボンズの言った意味がわからなかっただけだ。


(以上はの記事はあくまで「翻訳や訳者の難しさ」を語った内容の一部です)


・・・・・・
そう、この程度なのですね。この程度。


日本人はメディアの報道に浮かれて勘違いしないほうがいいのですね。


野球のお話としてではなくて、メディアの認識不足の問題として。