新装開店


先週は新装開店の店2軒を含め、三つの初めて伺う料理店へ出かけてきました。


ひとつは、料理店の経営者として一番尊敬する先輩の店。


外装内装、献立など、コンセプト全体を新たにした居酒屋さんを立ち上げられました。


普通だとコンサルタントを使って出来上がるような店つくりを、スタッフとともに自らの美意識ですべて作り上げてしまうのは、ご主人がいかに多くの店を食べ歩き、研究し、今という時代をきちっと見据えられているかという証です。努力と好奇心の蓄積がなせる技であろうと尊敬を新たにしました。


このご主人はたくさんいる同業者のなかで、いっしょに食べ歩いて楽しいほとんど唯一の人といっていいほど、様々の店をきちんと評価することができる舌と感覚を持った方です。


驚いたのは、開店祝いに一緒にうかがった同業の50年配以上の諸先輩方がしきりに「こういう店のよさがわからん」とおっしゃっていたことです。


その差は、時代の感性を磨きつづけること、というよりむしろ好奇心を失わないこと。


果たして、自分がその世代に到達したとき今の好奇心を持ちつづけていられるかどうか。


もうひとつの店は、魚屋さんでお会いする親方の店。


街中からちょっと外れた場所に、駐車場も大きく取ってぴかぴかの新装開店をされました。


こちらは場所柄に根付いたフラッと立ち寄れる店つくりです。開店三日目ということもあって、親方女将さんスタッフの皆さんの心地いい緊張感とお客様のざわめきが混ざり合っていい雰囲気です。


若いご主人にがんばっていただきたいものです。


三つ目はおすし屋さん。


新装開店ではないのですが、以前から一度伺いたいと思っていた店です。


烏賊、白川昆布〆、背黒鰯、煮蛸、蛤、子持ちの車海老、鮪づけ、穴子、〆鯖、干瓢巻き


そろえられた品物に、数合わせのために置かれるネタはひとつもありません。


故あって選び、仕事をきちんとしてお客様に召し上がっていただこうという志が端々に見えます。


こういうのを「目が利く」というのでしょう。そういう熱い気持ちは醤油ひとつ、日本酒ひとつにも現れていて瑞々しい気持ちにさせていただけます。


今度は私ン処の若い者も連れて行こうと思います。


伺った三店は、皆意欲にあふれ自分を見据えた仕事に専念されています。店の形態も料理の内容も客筋も、まったく今の私の店とは違いますが、こういう店に伺うと新鮮な刺激を受けることができます。