名演その4


イージーリスニングという音楽の分野がありました。(今でもあるんでしょうか?)


レイモン・ルフェーブルがいて、ポール・モーリアがいて・・・・・・昔、喫茶店などのBGMの定番です。


自己主張はなくても耳に心地いい音楽、少なくとも私などは好んで聴くことはありませんでした。(ポール・モーリアなどはアレンジャーとして素晴らしい才能を持っていますが)


耳に心地いいだけで、作曲家や演奏者の音楽への思い入れが感じられない演奏はつまりません。癒し系とかヒーリング・ミュージックといわれるもののなかにも、プロデューサーの商業主義だけが目に付く物がたくさんあります。「秋の夜に聞くジャズ」なんてタイトルのオムニバスCD(ありそうでしょ)のような物も、あのアルバムのこの曲、こっちのアルバムのその曲を寄せ集めただけのケースがほとんどだったりして、個々の演奏自体は素晴らしくてもアルバムとして心を動かすものではありません。


リチャード・ストルツマン「ヴィジョンズ」(RICHARD STOLTZMAN ”VISOINS”)


ピアノ・レッスンのテーマ、道のテーマ、黒いオルフェ雨に唄えばライオン・キングのテーマ等等


絵に描いたような映画音楽の名曲の羅列、クラリネットの物悲しい音色、メロディーを吹くだけの演奏、いくらストルツマンだっていいアルバムなわけない。


と思ったら大間違いです。


映画音楽がオリジナル以上に聞けることは全く稀です。


ストルツマンのクラリネットは情熱的で憂いを帯び心の琴線に触れる名演です。アレンジャーでプロデューサー、ピアニストでもあるジェレミー・ウオールの才能はきらきら輝いています。アルバムを通して聞かせてくれます。


耳に心地いい音楽は、耳だけ出なく心にも心地いい音楽に仕上がっています。


すべての音楽ファンにお奨め。