職人Ⅱ


昨日の鈴木さん(仮名)という職人さんのお話が前振り、と言うわけでもないのですが、毎月講習会をしている職人集団でこんな議論がありました。


件の鈴木さん(仮名)が講師を受け持つ事になり、時期は6〜7月。


「じゃあ、鮎でもやって見ようか」と鈴木さん(仮名)


「天然鮎は高くてしょうがないから、養殖を使って鮎の真骨頂を見せますよ。養殖で勉強しておいたらいざ天然を使っても大丈夫」と


その言葉に私の尊敬する別の分野の職人さんが答えました。


「少しくらい高くても皆で払いますから天然使ってくださいよ。天然鮎って最近食べられないから」


「いや、高い材料が良いわけじゃない。皆だって実際の現場で天然物なんて使えないんだから」


「お言葉ですが、じゃ、申し上げます。養殖鮎で勉強しておいて、それを天然鮎にっていう方法は違うんじゃないですかね。天然鮎でやる例えば塩焼きを養殖でやっても美味くも何ともない。原価ばかりを考えて養殖で、というなら養殖でもなんとか食べられる調理法を講義するべきだと思います。でも、せっかくの勉強会なんだから出来れば最上級の素材を最高の調理法でというのを見せていただきたいです」と


議論は白熱しました。


お互いの仕事を認め合っている仲間道志ですから、相手を誉める事はあってもこういう原点にもかかわる議論が起こることはめったにありません。


議論の渦中の二人はメンバーの中でも一目おかれる腕の立つ方です。


各人がこの二人の話を聞きながら、自分の仕事、店の方針に思いをめぐらすいい機会でありました。


私?


養殖鮎を使うくらいなら別の魚を使います。


絶対。


鈴木さん(仮名)には言えませんが。