現在 過去 未来


現在 過去 未来


といったって、渡辺某の歌のお話(話が古いね)ではありません。


ジャズ ピアニスト チック・コリアの新譜です。


”PAST,PRESENT&FUTURES”


チック・コリアが新しいトリオで録音したこのCDは相変わらず才気溢れる胸のすくような出来です。一昨日買ってきてこればかり聴いています。


このところのチックの充実ぶりには目を見張る物があります。今回の新しいトリオは以前のエレクトリック・バンド〜アコースティック・バンドの流れと同じく、三年続くレギュラークインテットのベーシストとドラマーによって結成されています。


アコースティック・バンドのジョン・パティトゥッチとデイブ・ウェッケルも不動といえる地位を築きましたが、今回のアヴィシャイ・コーエン(ベース) ジェフ・バラード(ドラムス)はさらに素晴らしい。


で、今日のお話はアヴィシャイ・コーエン(ベーシスト)。


彼は、チックのバンドに参加した頃からその実力が噂になるほど優れた奏者なのですが、CDで聞く限りでは私にはまだ本領が見えませんでした。


今回のトリオではまさしくその本領をいかんなく発揮してます。


何よりビート感が素晴らしい。


一曲目の数小節で世界に実力を誇示したといってもいいほど、音色にも音の太さにもタイムにもビート感が溢れています。


極端に言えば、ベーシストには上手さはなくてもビート感さえあれば十分だと思うほど大切な素養です。


彼にはそれがあります。もちろん上手さも兼ね備えていますが。


考えて見ると、チックのそばにいたベーシストは、どちらかというとビート感より上手さというのか、多弁というのか、饒舌なベーシストが多かった気がします。


ミロスラヴ・ヴィトス、スタンリー・クラーク、エディー・ゴメス、ジョン・パティトゥッチ、カルロス・ベナベント。


中にはディブ・ホランド(マイルス楽団 スタン・ゲッツカルテット サークル)やロン・カータースタン・ゲッツ”スウィート・レイン”、”ミラー ミラー”など) クリッスチャン・マクブライド(バド パウエルシリーズの録音とライブ)もいますが、長く連れ添うという感じではない。


アヴィシャイ・コーエンはこれまででも最高のビートをチックに送っています。


チックのピアノのビート感、アヴィシャイのベースのそれ、ジェフ・バラードは緻密でもっと複雑なビートを刻み、三人の粒の立ったビートが踊るような演奏が怒涛のように繰り広げられています。


このトリオの活動が楽しみです。


チック・コリアを知ったのが1969年マイルスグループへの登場と衝撃の”ナウ・ヒー・シングス、ナウ・ヒー・ソブス”


あれから30年以上、常に2歩も3歩も抜け出たところで音楽を発信しつづける才能と気力は脅威的です。


マイルスが1956年から1970年まで(それ以上に活躍しますが)の事を思うと、もうマイルスを越えているかもしれない。


凄いミュージシャンです。