悲愴

高校生の女の子が「悲愴」(ベートーベン ピアノソナタ)の第二楽章を練習しているのを聞きました。


こういう曲は、CDやコンサートで完成されたものを聴く機会しかありません。


練習のために細分化されて高音部、中音部、低音部と区別して聴くと、なんと美しいメロディーだったのかと改めて感動を呼び覚ましました。


それだけでなくゴシック建築のように、一つ一つを積み重ねて構築し、美しい単体のメロディーがさらに厚みを増して広がっていくのが、設計図を見るようにわかるのです。


最近のベートーベンのお気に入りは、ポリーニの後期ピアノソナタだったのですが、「悲愴」を再びと思って、車のCDチェンジャーにバックハウスの録音をセットしておきました。


フレンチのシェフが、「お話に夢中になっているお客様が料理を一口食べたとたん『オッ!』とお皿に集中してくれるのが快感」とおっしゃっていたことがあります。
私などそんな自信は100%ありませんが、音楽でこういう経験させてもらったことは度々あります。


朝の仕入れに向かう車の中でかかった先のバックハウス「悲愴」、車の運転中なのに高校生の練習で目覚めた曲のすばらしさに、どこを走っているのかさえ忘れてしまい、気がついたら魚屋の駐車場、曲が終わるまでエンジンを切らずに聴き入ってしまいました。


車の運転中に名曲、名演は危険です。


「ベートーベン」〜「悲愴」〜「後期ピアノソナタ」〜「バックハウス」〜「ポリーニ」ってあまりにベタなクラシックの話で恥ずかしいけど・・・板前の話題なんてそんなモンです。


お得意さまのYさんがバースデーヴィンテージの1961年「コス デス トゥルネス」を持ってお出でになりました。ワイン自体は一週間ほど前にお預かりしてワインセラーに立てて置いてありました。


1961という偉大なヴィンテージの格付けクラスをいただくのは初めてです。ご相伴させていただくと、いまだに若々しく果実味がしっかりしていて、やさしくこなれたタンニンが心地よく、この熟成感はさらに10年以上は続くのではないかと思うほど素晴らしいワインでありました。


偉大な年というのはこういうものなのか、と感激です。


Yさんこの手のワインの持ち込み再びよろしくお願いします。


そう言えば、やはりお得意さまのTさんの奥さまも1961年のお生まれ。お持ちのバースデーヴィンテージは是非一本は私ン処で空けてね。


これ、私的なおねだりです。