十四代


NEWS 23で「十四代」の特集をしていました。


シンデレラとか幻とか騒がれる山形の日本酒の蔵です。


筑紫−草野両キャスターがわざわざ山形へ出かけての中継という力の入れようでした。


私ン処のお得意さまにはすでにお馴染みの日本酒、耳にたこができるほど蘊蓄を聞かされたと言われるかも知れません。


初めてその存在を知ったのは3〜4年前。ともかく量が少なくて入手の難しい酒でした。今ではある程度いただけるようになったものの、それでも好きなだけもらえるわけではありません。


全国で50店舗の酒屋さんでしか扱えない上に、入荷日には抽選が行われるほどの人気ですからその希少性は押して知るべしです。


そうとは知らずに私ン処で勧められるままに飲んでいたお客さまも、あの特集を見れば驚くことでしょう。


十四代の登場によって、常々唱えていた「日本酒は甘口、辛口で表現する時代ではない」ということがわかっていただけるのではないでしょうか。


よくお客様に「辛口の日本酒を」と所望されます。そんな方にはいきなり十四代はお勧めできません。よくよくそのお客さまの舌を探った上でなければ「甘い!!」の一言で片づけられてしまいます。新潟系淡麗辛口以外お口に合わない方には鬼門でしょう。


が、十四代も「甘い辛い」であえて区分けするとすれば本当は「辛い」お酒です。


芳醇な香り、初めに広がる豊かな味わいが甘露とでも言うような甘さを感じさせ、後に残る余韻はしっかりDRY、といえばわかってもらえるでしょうか。


最初に口に広がる甘みだけでこのお酒を判断するような飲み手には出したくありません。


十四代の不思議は味以上に杜氏でもある15代目の若主人です。


31歳。二千石の蔵としては異例の次期蔵元自身の杜氏。24歳で蔵人の経験を経ないで杜氏となり7年。


若くして多くの蔵人を指揮する能力を持ち、この味を作り出すのは天才と言えます。


板前が、門前の小僧だとしても、修行を経ずしていきなり調理長となって全国区で脚光を浴びるということはほぼありえません。


酒造りは7割が人間といいます。TVの映像や雑誌などのメディアでみる若主人は、見た目以上の何かを秘めているのだと思います。


せっかくのいいお酒です。ブームになってしまわずに好きな方だけの間で飲まれて欲しいものです。