ラ・ナプール


最初にフレンチレストラン「ラ・ナプール」のことを知ったのは
雑誌「NASVI」での戸塚省三さんの紹介記事でした。


行ってみたいと思う店を的確に選ぶには
どのメディアで誰がどのように紹介しているのか
また、
身近な人でもだれが「いい!」と言っているのか
が重要となります。


「日本では地方に本当のフランス料理店は存在しない
志摩観光ホテル”ラ・メール”と”ラ・ナプール”以外は」
戸塚省三さんのこの言い分はそそりました。


初めて伺ったのは2年前の初秋
当時はまだテーブル4つのみ
奥さまがコーディネートするすっきりしたテーブルセッティングに好印象を持つ間もなく
運ばれてくる料理の一皿一皿の圧倒的迫力と集中力に
初回からノックダウンされてしまったのでした。


使われる素材に
「まっ、このくらいはイイや」という妥協が全くない
たとえば使われるきのこをとっても全てフランスから空輸のフレッシュばかり
魚は地物だけにとらわれず
日本料理店でもお造りに使う最上級の魚を正しい熟成をさせて使っている
肉ももちろんその辺の肉屋にあるような品物は何一つでてこない
ポーイヤックのアニョ(子羊)
間引きの蝦夷しか
ブレスの鶏
フランス空輸のジビエ
青森の子牛


忘れられない皿
厚岸の牡蠣シャンパン蒸しキャビアを添えて
これまで食べたことがないほどムッチリした牡蠣 シャンパンの香り 極上のキャビア
こんなにいいキャビアなのにその自己主張はとんがっていなくて
一皿が見事に調和している


間引きの蝦夷しかブルーベリーのソース 洋なし添え
鹿肉ってこういうもんかと初めて納得(これまでのは鹿のようなものでした)
鹿 ブルーベリーノソースと洋なしが口の中で一つになると
お互いが3倍のおいしさに昇華してしまう
なんという相性の良さ
これに合わせたメオキャムゼ ヴォーヌロマネ レショーム ’92
ワインと料理のマッチングの妙
おいしさがさらに5倍に膨らんで
皿とグラスの中に顔を埋めていたいと思ったものです。


白トリュフ
たぶんこれほどの白トリュフはフランス イタリアを探しても
三ツ星のほんの2〜3店でしか使っていないという最上級
マフィアがアタッシュケースに入れて運んでくるとか
トリュフの入っているケースを開けただけで店内が香りで充満して
顔が赤くのぼせてしまうほど


昨日も書いたようにこの成澤シェフ
まだ、28歳でした。
今、30歳


私とは一回り以上歳が違うというのにすでにこの領域で仕事をしています。
これは、大変な集中力と意志の力
食材に対するしつこいくらいの執着心がなければできないことです。


もう、この店では何かを得ようとか、勉強しようなどとは思いません
ひたすら食べて、この天才の一皿を満喫できる幸せを享受するだけです。