猫の額
私ン処の前庭は、まさに猫の額と言っていいほどの広さです。
前庭というよりエントランス。導入口。
とでも言った方がいいかもしれません。
日本料理店ですので、普通なら小さな木の2〜3本も植えて、看板置いて
と考えるところですが、私ン処はもうちょっと違います。
縁があって才能豊かな庭設計者と出合うことができたのがきっかけでした。
東京を拠点に仕事をしておられる、大橋鎬志さんという設計者です。
大都会でもなければ庭の設計といえば、
建物本体の設計者がちょっと絵を描く。
もしくは庭屋が設計と施工を兼ねるのが当たり前です。
当初はそんなつもりで、と言うよりはそんな方法しかないと思って
いくつかの図面を見ていたのでした。
しかし、大橋さんの描く絵は全く違いました。
わずか2〜3坪のスペースだというのに
3つも4つもの選択肢を持つ図面ができてきて、
まったくそれだけでもワクワクしてしまいました。
で、
決定したのが今の前庭
木が一本もない通りに「柿の木」を植え
トクサに黒竹、萩
御簾垣で直接玄関をみえないように隠し、
入り口は暗く、中にはいるに従って明るくなるように照明を配置する
などなどなど
見えないところ、気づかないところにさりげなく気持ちを込めて
予約のお客さまがいい気分で入店し、満足してお帰りになるように造ってくれました。
お客さまにとっては心地よさだけが残ればよい
という、基本的な考え方を設計者が見事にくみ取ってくれ、表現してくれた
100%満足の前庭です。
お客さまによっては入るのに二の足を踏むとおっしゃる方もいるのですが、
それも、大橋さんと私のもくろみの内。
「誰でも気軽に入ってくる店」のつもりではなく
(客席数も多くはないですから)
予約をして置いて「さあ、行こう!」
と思っていただける店になってみたいと思ったのでした。
(で、入ってみたら思いの外気楽ってのが、さらに理想的ですが)
さて、そんなお庭に料理が釣り合っているのか、
そこんところはもっと重要です。