ほろ酔いセット 詳細


今月のほろ酔いセットで提供するお酒の詳しいお話をしなくていけませんでした。


お得意様はすでにご存じですが、お客様にお酒をお出しするときには多くの場合(お客様のお話の邪魔にならない程度に)お酒にまつわるお話しさせていただきます。今回は初見の方々にも興味を持っていただくために前情報を少々。





☆無濾過生原酒 純米大吟醸限定 朝日酒造(新潟 長岡)


実はこれ、久保田萬壽の無濾過生原酒なんです。この時期に朝日酒造さんでは萬壽をタンク6本仕込むのですが、その中の最上の一本の一部を無濾過生原酒、つまりお酒の赤ちゃんの状態で出荷しています。口に含むとパーーンとはじけるようなパンチ、口内に広がる米の旨みとさわやかな酸味、それでいて一般的な無濾過生原酒にくらべるとあくまで上品さをたたえ、後味は綺麗ですがすがしいのです。このお酒をブラインドで飲んで萬壽の原型であることをイメージできる方はほとんどいらっしゃらないと思います。お酒のあかちゃんと申し上げましたが、状態は赤ちゃんでも味わいは年齢も経てオーラをタップリたたえている魅力的な女性って感じ。出荷量は極小です。



黒龍しずく(福井 永平寺町


弁いちの定番中の定番です。このしずくを一年通して飲める店であることを目指してお酒を出し始めました。大吟醸を冷温で三年寝かせた熟成酒です。吟醸香はあくまで控えめ、最初の飲み口は新潟酒ではないかと思うほど淡麗の極みにあるのに、アフターテイストの奥行きと余韻の長さは日本酒の中でも突出しています。さらさら飲めるだけではないのです。年末と夏に少量飲める機会は訪れるのですが、弁いちでは一年中この至福を味わえます。とはいってもお酒をしずくだけにとどめておくのはもったいない。



☆開運 波瀬正吉 厳選純米大吟醸斗瓶囲い無濾過生原酒 冷温熟成(静岡 大東町


歴史に残る名杜氏波瀬正吉さんが亡くなって、「開運は大丈夫か?」という不安は初年度で一気にぬぐい去られました。波瀬さん後の開運も見事に波瀬さんの意思を継承しています。それが証拠に安定的に全国新酒鑑評会で金賞をとり続けています。店で使う開運はともかく最上でありたい。開運のトップを召し上がっていただきたい。このボトルは開運の最上波瀬正吉の中でも斗瓶に五本だけとられるという純米大吟醸斗瓶囲い無濾過生原酒です。今回ご提供するのは一年冷温で熟成した斗瓶。もしご興味があれば、昨年の金賞受賞酒、今年の静岡県純米の部で一等賞をとった斗瓶(今年の造りです)の三種類の開運最上の大吟醸をご用意できます。



十四代 大吟醸 播州山田錦(山形 村山)


黒龍しずくと並ぶ弁いちの定番中の定番。「また十四代ぃぃぃ」とお客様に笑われるほど十四代はよくお客様の前で登場します。しかしながら「もう十四代はいいや」というかたも「十四代はもう飲み飽きたから」という方もほぼ見当たりません。店では当たり前でも世間一般では入手困難な日本酒の代表格なんですね。嫌みのない静かにたたずむ花のような香り、ゆっくりと口に広がるお酒の旨み、いやお米の旨みというべきかもしれません。甘い?そうじゃぁなくてふくよかさの広がりなのです。だって、女性に「太られましたね」というよりは「ちょっとふくよかになられましたか?」って尋ねる方がスマートでしょ。・・・なんていう冗談はさておき、甘味は旨みであってふくよかさなんだということを証明してくれているお酒がこれです。辛いお酒が最上であるという方に一度試してみていただきたい。辛いだけが正しいのではありません。



天狗舞山廃純米大吟醸 平成16年冷温熟成(石川 白山)


つきあいのある酒屋さんにこの熟成酒があることを知ったときには本当に小躍りしました。天狗舞の山廃純米大吟はずっと杜氏中三郎さんの実力はこれではないのではないのだろうか?と密かに思い続けていました。そして自分で一年寝かせた物を飲んでみて目から鱗が落ちたのです。やっぱりこの山廃は最低でも一年寝かせるべきです。それが八年の間正しい温度で眠ってきたのです。山廃のがっちりした骨格と綺麗な酸を残しつつそれらの角が取れて綺麗にまとまった味わい。「これか!山廃!!」と膝を打ちます。たぶん世の中にもう何本も存在しないはずの中三郎さんの熟成山廃、飲み終わってしまったらもうありません。



ってなことをいつもお座敷でお客様にお話ししながらお酒をお出ししています。お越しいただいた方々にはさらにディープなお話を。これらの希少酒をグラスで気軽の飲める機会は多くはありません。是非。