悪女ブルゴーニュワイン
ブルゴーニュワインの虜になるのはなぜでしょうか。
多分、裏切られ裏切られ続けても、何十本かに一本の妖しい魅力をもった娘(こ)に突如出会ってしまうからです。裏切られる数が多いほど、きらめく魅力の虜になりやすいのです。
ボルドーワインの素晴らしさはその安定感。「19○○年のポイヤック、シャトー○○」というだけで味わいのイメージが頭の中にできていて、大きく裏切られることがないいい娘(こ)です。両家の子女、由緒正しければ大きな間違いはありません。安心して選べるのです。
先日そんな悪女に出会ってしまいました。
ふつーーのシャンボール・ミュズニー、とはいっても造り手は世界の最上ワインを造り続けるコント・ド・ボギュエ。とはいってもボギュエの真骨頂 特級畑のミュズニーではなくて、何度も言うようですがふつーーのシャンボール・ミュズニー。しかも1994年という決していい年とはいえないヴィンテージです。
近頃ではコント・ド・ボギュエは高くて手が出なくなってしまっていたのですが、たまたま一本だけリーズナブルな価格で分けていただいていたのです。
ブルゴーニュワインにはまりつつあるお客様に予算を考えてアンヌ・グロのシャンボール・ミュズニー2000とコント・ド・ボギュエのシャンボール・ミュズニー1994を並べてお出ししたのです。同じ地区の最上の作り手の飲み比べ。
アンヌ・グロ2000年のシャンボール・ミュズニーはいまがジャスト飲みごろ。これまで何本か開けてみてその美味しさの間違いなさは実感していました。
で、
二本目に開けたのがボギュエ。
抜栓して香りを確かめると・・・・
「ああ、何という広がり、豊かなブーケ、複雑に絡み合う妖しい芳醇」
試飲のために一口
「いけません。こんなのいけません。美しすぎます。腰が砕けそうです。ボギュエとはいえふつーーのシャンボール・ミュズニーなのに。土にまみれた村娘が気づいてみたら女優のように美しかった・・・みたいな。こ、これはお客様に出さずに自分で飲んじゃいたい」
そんなことが一瞬のうちに頭によぎるようなワインとの出会いです。
こういう一本があるからブルゴーニュワインはやめられないのです。