偉大なオフヴィンテージ


いつも極上のワインをお持ちいただくお得意様が今回抱えて見えたのは「ボンヌ・マール1997 ドメーニュ・ドーヴネイ」


フランス ブルゴーニュの傑出した造り手、ラルウ・ビーズ・ルロワの個人所有の特級畑から造られる超高級ワインです。


1997年という年はブルゴーニュボルドーともにオフヴィンテージで、平たく言うと悪い年(本来はその年のキャラクターなのですが)、よく言うと早く美味しく安く飲めるありがたい年で、これまで私が経験した1997年もほとんどのワインが1995年や1996年よりも速く飲めて果実実には乏しいながら滑らかで優しいのみ口でした。いわるゆ流行の濃くってはじけるようなワインを見つけることのできない年なのです(ただし、マダム・ビーズの造るワインはオフヴィンテージでも安くはなりません)


ところがこのボンヌ・マールはどうでしょう。これまで飲んだどのドメーニュのボンヌ・マールよりも素晴らしい。これほど濃縮感のあるワインを普通のドメーニュ見つけることはグレート・ヴィンテージでも難しいのではないかと思うほどです。こんな1997はありえません。マダム・ビーズの造るワイン(ドメーニュ・ルロワとドメーニュ・ドーヴネイ)はどれも大変お高いのでたくさん飲んだ経験はないのですが、私の数少ない経験の中ではやはりオフヴィンテージの1992年ヴォーヌロマネ レボーモンと並ぶ美味しさです。グッド・ヴィンテージの1988年や1989年には感じられない華やかな香りと果実実あふれる味わいがオフヴィンテージのほうにあるというのは、いいヴィンテージのワインはまだ熟成が極まっていないということなのでしょう。


なんという造り手でしょう。ラルウ・ビーズ・ルロワが個人の畑のワインを造り始めたのが1988年の事です。オフヴィンテージのワインは飲みごろをむかえていても、彼女の造るグレートヴィンテージのワインはまだ一本も花開いた事がないのかもしれないのです。花開いていなくても彼女と彼女のワインの名声は高くなるばかりです。


私のセラーに眠っている1996年 ヴォーヌ・ロマネ、ジュベリー・シャンベルタン ムルソー グッドールはいつ飲みごろになるのでしょう?調子に乗って買ってはみたものの、私が生きている間に開くのか?


今回はじめてマダム・ビーズの1997ボンヌ・マールを飲ませていただいて、底知れない彼女のワインの魅力の一端をまた垣間見た気がします。恐るべしマダム・ビーズ。