呼び方


サッカーの中田はインタビューで同じ代表チームの選手を「秋田(もしくはアキ)、モリシ、ゴンチャン」と呼ぶと答えていました。この三人は30歳を過ぎた年上、ベテランのメンバーです。


そういえば、以前の代表チームでも試合中に「イハラ!」(井原)とやっぱり年上を呼び捨てにしていたと話題になったことがありますが、彼にしてみれば、そんなことに気を使うほどやわな関係ではないということなのだそうです。


野球界では選手の実力のレベルに関わらず、年上には「さん」づけが当たり前だと聞いたことがあります。


初めて職人の世界に修行として入ったとき、同時に三人が同じ調理場に入りました。Aさんは高校を卒業したばかりの18歳。Bさんはすでに経験者らしき20代半ばくらいの方、そして私はフラフラしていて20歳を過ぎ、老け顔であったこともあって、見た目だけでかなりの経験者と誤解されてしまったようです。


初めて挨拶した時、Bさんの私の呼び方は「○○さん」


当日仕事場に入って私のいかにも素人くさい仕草を見てからは「○○くん」


翌日からは「○○よぉぉ」


一週間もすると「○○!!」と怒鳴られるようになりました。


私にしてみると、もともと一番の下っ端で入ったつもりですから「さん」づけで呼ばれること自体変な気分ではあったのですが、実力と年齢を把握しつつ呼び方が刻々と変わっていく様は全く見事なものでした。


「○○くん」「○○」(呼び捨て)など呼び方は、呼んだ本人が呼ばれた人間への位置付けを表明しているようで微妙なお話です。特に最初にどのように呼ぶか、それがどう変化するかは呼ぶ方の人格も見えるような気がします。


TVで三流レポーター(一流がいるかどうかは知りませんが)が、人気のタレントを「○○くん」と呼ぶとき、「私は彼と親しいのだ」「彼もよくがんばっているよね」みたいな虚栄心が見え見えで気持ち悪く感じられます。


件の中田のケースのような場合は、サッカーの実力がなせる特殊な例で、代表メンバーにも入れない選手が一流選手を呼び捨てにしたら、やっぱり日本の風土では違和感があるのでしょうね。


私などは、自分が相手を格付けするような態度がとてもいやで、客様でも魚屋の下働きの若いお兄ちゃんも同じように「○○さん」と呼びます。別に意識しているわけではないのですがそれが当たり前になっています。店の若い男性だけが「○○くん」、それ以外は別の店のどんなレベルの見習さんでも「○○さん」


それくらいがとても居心地がいい気がします。そういうことを意識していること自体上下関係に敏感な心の狭い奴ってことなのですが。